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2004年9月 8日

アフターダーク読了

読了後の感想など。

小説としてのボリュームは非常にライト。短めの中編くらい。
まず「私たち」と称される第三者の視点で物語は始まるのだが、彼らは前編を通して映画を観る観客に近い存在だ。各所に映画におけるカメラの動きや編集された映像の描写、セリフとト書きのような箇所もあり、恐らくこの小説は映像の技法を意識して描かれているようである。小説としてのボリュームがライトなのは一般的な長編映画の尺に近づけたためだろう。映画としてこの小説の時間を計るなら2時間30分前後になるのではないか。
これまでの著者の小説には見受けられなかったモチーフが次々と出てくるのもこの小説の特徴だ。俗っぽいと言ったら語弊があるかもしれないが、私たちの生活に近いものばかりが出てくる。「デニーズ」「すかいらーく」「読売新聞」「ケイタイ」「セブンイレブン」「スガシカオ」「サザンオールスターズ」等々。そして舞台は「真夜中の繁華街」だ。どうやら渋谷のようである。
物語の筋は非常にシンプルだ。真夜中から翌日の明け方までの数時間の間に起こったできごと、それに関わった数人の(たぶん5人の)物語だ。作中に登場する「ファイブポイント・アフターダーク」が象徴するように、彼ら5人の夜明けまでの物語だ。
今回も著者の小説に共通する「喪失感」を彼らは抱えているが、今までと異なるのは非常に具体的なかたちで、これもまたシンプルにそれぞれの人物に投射されている。また彼らは外部とのコミットメントを計ろうとしている。それがどんな形であれ、実社会とのコミットメントを計ろうとしているように見受けられる。著者の作品群を発表順に並べてみると、この作品がデビュー作「風の歌を聴け」からどれだけ先へ進んだか(それが正しいか誤りかは別として)手に取るようにわかるだろう。デビュー25周年記念を年頭に置くならば「アフターダーク」はしるしの一つとしても受け取ることができるだろう。故に文体や細部を楽しんだり、何かに勇気づけられるタイプの小説ではない。数いる読者の中にはそういった人もいるかもしれないが、僕はそう思わなかった。しかしそうはいっても、読了後に「喪失から生まれる希望」に近い何かを感じたことは事実だ。夜はやがて明ける。次の闇まで時間はまだある。

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